アメリカ法人:BOI提出義務化へ
今回は、2024年からとある国で行われたアップデートをお伝えします。今回、ピックアップする国はアメリカです。アメリカでは、2024年より法人運営に関して重要な変更が実施されました。
アメリカでの法人運営において必要な手続きはこちらの動画を参照ください。
※なお事業形態・進出する州等個別の状況により必要な手続きが変わる場合があります。
詳細については税理士等にご相談ください。
上記の動画でも解説しましたが、2024年1月1日より米国内で事業を行う法人は、実質的所有者情報(Beneficial Ownership Information、BOI)の提出を義務付けられます。簡単に言うと、法人のオーナー(持ち主)や株式を所有しているメンバーの名前や住所の情報を政府機関に提出する制度です。
※追記(2025/1/10):2024年12月3日にテキサス州連邦地裁がBOI報告義務を一時停止する仮差止命令を発行しました。その後、2024年12月23日に控訴裁判所がこの命令を一時解除しましたが、12月26日に再び仮差止命令が有効となり、現時点でBOI報告義務は停止されています。詳細は後述をご確認ください。最新情報はFinCEN公式サイトをご覧ください。
このような変更が行われた背景ですが、資金洗浄やマネーロンダリングなどを防ぐために行われました。
政府機関が自国の法人を取り締まる動きは、単にアメリカだけで強化されている訳ではありません。ドバイや香港などでも、会計監査の取り締まりは年々強化されており、そのために監査を無事に終えるための会計士のコストが年々増加しています。
対して、今回のアメリカの変更は、あくまで法人のオーナーや株主の名前と住所などを提出するだけですので、コスト的な負担はほとんど増えません。手続きも自分で行えば無料で完了します。提出方法は後ほど簡単に紹介します。
皆様が1番気にされるのは、プライバシーについてですが、提出された実質的所有者の情報(BOI)は、政府機関内で厳格に管理され、一般公開されることはありません。法人で問題が生じた場合に政府機関が情報にアクセスすることがあります。
この措置により、法人とオーナーのプライバシーが保護されると共に、ビジネスの透明性を確保するバランスが取れています。
今回のBOIの概要は下記の通りです。
BOI:提出概要・提出方法
・対象:アメリカ国内で事業を行う全ての法人
(設立の州、株式会社・LLC等の形態を問わず)
・免除されるケース:金融機関など特定の基準に該当する企業
・報告内容:法人と実質的所有者の詳細情報
(法人の名前や住所、法人のオーナーや株主の名前や住所、パスポートなどの身分証明書)
※法人の株式を複数人で保有している場合は複数名の情報を提出する必要があります
・BOIの報告期限
本来、法人設立より30日以内の提出が必要ですが、現時点では米国内での訴訟によりBOI提出は任意となっています。今後の訴訟で再度義務化される場合があります。
※追記(2025/1/10):2024年12月3日にテキサス州連邦地裁がBOI報告義務を一時停止する仮差止命令を発行しました。その後、2024年12月23日に控訴裁判所がこの命令を一時解除しましたが、12月26日に再び仮差止命令が有効となり、現時点でBOI報告義務は停止されています。詳細は後述をご確認ください。最新情報はFinCEN公式サイトをご覧ください。
・1度提出を行えば、実質的所有者変更等がない限りは毎年提出する義務はありません。
ただし、法人の実質的所有者が変わる場合は、その都度BOI提出が必要です。変更日から30日以内に提出してください。
その他、BOIの詳細についてはFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク部局)の公式HPをご参照ください。
FinCEN-よくある質問;
https://www.fincen.gov/boi-faqs
またBOIの提出は下記のHPにある「File a report using the BOI E-Filing System」より手続きが可能です。
BOI提出について;
実はBOIの手続きを25USD~49USDで丸投げすることも可能ですが、弊社の一部の有料会員様にだけシェアしたいと思います。弊社では、今後も各国の税率のアップデートのみならず、海外法人の維持・運営に必要な情報もお届けしていきますので乞うご期待くださいませ。
追記(2024/12/17)-BOI報告義務に関する最新アップデート
企業透明化法(Corporate Transparency Act, CTA)に基づき、ほとんどの企業に2025年1月1日までに義務付けられていた実質的所有者情報(Beneficial Ownership Information, BOI)の報告ですが、2024年12月3日にテキサス州連邦地裁が全国的な仮差止命令を発行したことで、この義務が一時的に停止されました。
この時点では、一時的にBOIの報告の義務が停止されました。
追記(2024/12/27)-BOI報告義務に関する最新情報:報告期限の再設定と例外
2024年12月23日、アメリカ第5巡回控訴裁判所が、テキサス州東部地区連邦地裁(Eastern District of Texas, Sherman Division)が発行した全国的仮差止命令を一時停止しました。この裁定により、CTA(企業透明化法)およびBOI報告義務が再び有効となりました。
この結果、報告企業には新たな報告期限が設定されました。しかし、すぐにこの決定が覆る事態が生じました。
追記(2025/1/10)-BOI報告義務に関する最新情報:報告義務の再度停止へ
2024年12月26日、アメリカ第5巡回控訴裁判所の別のパネルが、12月23日に出された仮差止命令の一時停止決定を取り消す判断を下しました。これにより、2024年12月3日にテキサス州東部地区連邦地裁が発行した仮差止命令が再び有効となりました。
この判断による主な影響は以下の通りです:
- BOI報告義務の停止
仮差止命令が再び有効になったことで、報告企業は現在、BOI情報を提出する義務を負っていません。報告を行わなくても罰則の対象にはなりません。 - FinCENの対応
FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク部局)は、テキサス州連邦地裁の仮差止命令に従い、報告義務の執行を停止しています。FinCENは公式声明で、「仮差止命令が有効である限り、報告企業には提出義務がない」と述べています。 - 自主的な提出の可能性
法的義務は停止されているものの、報告企業は自主的にBOI情報を提出することが可能です。自主的な提出を行うことで、義務が再開された場合に備えることができます。 - 財務省の対応
米国財務省(Treasury)は、最高裁判所に対して仮差止命令を再度無効化する要請を提出しました。今後の裁判所の判断によって、BOI報告義務が再び有効になる可能性があります。
背景と今後の展開
2024年12月23日には、アメリカ第5巡回控訴裁判所がテキサス州連邦地裁の仮差止命令を一時停止し、BOI報告義務が一時的に再開されました。しかし、12月26日の新たな判断により、仮差止命令が再び有効となったことで状況が変化しました。
現在、CTA(企業透明化法)およびBOI報告義務の合憲性を巡る裁判は進行中であり、裁判所間で判断が分かれています。第5巡回控訴裁判所での判断が最終的な決定となるわけではなく、今後も以下の展開が予想されます:
- 最高裁の判断:財務省の要請を受け、最高裁が仮差止命令の取り扱いについて判断を下す可能性があります。
- 他の裁判所での進行中の訴訟:CTAの合憲性を巡る他の訴訟でも異なる判断が出される可能性があり、最終的な統一見解はまだ先になると考えられます。
現在(2025年1月10日時点)、BOI報告義務は停止されていますが、今後の裁判結果によって再び義務が再開される可能性があります。企業は、以下の点に留意しながら対応を進めることが重要です:
- 情報の整理:義務が再開された場合に備え、法人と実質的所有者の情報を整理しておく。
- 最新情報の確認:FinCEN公式サイトや政府の発表を定期的に確認する。
- 専門家への相談:法的状況が流動的なため、必要に応じて専門家に相談する。
このような情報整理と準備を行うことで、今後の状況に柔軟に対応できるようにしましょう。最新の動向についてはFinCEN公式サイトをご確認ください。
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※本記事は、2025年1月10日時点のものです。可能な限り正確な情報を提供するよう努めておりますが、必ずしもその内容の正確性および完全性を保証するものではありません。なお、個別具体的な税金・法律に関するご相談は、税理士などの専門家にご依頼ください。