現在、多くの企業がオフショア戦略を進め、海外の税金・物価の安い地域に法人を設立しています。インターネットの発達によって、誰でも地球のどこにいても、オフショア・バンキングのような高度で重要なトピックについて耳にする機会が増えてきました。 銀行口座を国際化することの利点に気づく人が増えていることは嬉しいですが、現実には、安価な外交官用パスポートから極秘のプライベートバンク口座まで、実際に存在するかどうか怪しいものを勧める人たちも出ています。
『お金さえ払えば「●×銀行」に匿名の口座を開設しますよ(もちろん実名を教えたいが、何らかの事情でどうしても教えられないが…)』と言って高額な手数料だけ取る人たちもいます。オフショア銀行口座の種類は多岐にわたるため、ここではプライベートバンク口座とはどういうものか、口座の開設方法から取得すべきかどうか解説します。
富裕層がこよなく愛すプライベートバンクとは?
まず、プライベートバンクとは、匿名性の高い銀行という意味ではありません。かつては、スイスで番号でやり取りが完結する銀行口座として非常に高い秘匿性が認められていました。しかし、現代では共通報告基準(CRS)により海外口座に関して各国間で情報交換されるようになり、完全な秘匿性を保つことは難しくなりましたが、セキュリティの高さは一般的な銀行よりも優れています。
プライベートバンクでは、一般的な銀行口座を持つこととは全く違い、より高度な顧客サービスとハンズオンマネジメントを望む富裕層が保有する資産管理口座のことです。プライベートバンクでは、顧客の資産運用を顧客の代わりに専任のバンカーが行います。このプライベートバンクの起源は、16~17世紀のスイス・イギリスにあります。プライベートバンクというワードが存在する以前から、ベネチアの実業家たちは、富裕な家庭の財産を預かり、再投資することを考えていました。
最初のプライベートバンクは、法人格のない会社で、銀行への預金者の資産に加えて、ゼネラルパートナーの個人資産を負債としていました。やがて初期のプライベートバンクの多くは法人化され、現在の銀行のような姿になりました。プライベートバンクと一般的な銀行の主な違いは、預金額とサービス内容です。
世界各地のプライベートバンクの口座開設方法とは?
プライベートバンクの口座を取得するための主なハードルは、銀行があなたに代わって管理する最低預金額です。プライベートバンクの最低預金額は、一部の国で25万米ドル程度(約3000万円)のもありますが、多くは1億円以上の預金が求められます。
中でも米国のJPモルガンには、最低25万米ドル(約3000万円)の預金を必要とするリテールバンクあります。そこに預金している人をプライベートバンクに誘導するケースもあります。またHSBC Premierでは、ほとんどの国で最低10万米ドル(約1200万円)程度の資金でプライベートバンクに近いサービスを提供します。ただ、通常プライベートバンクにあるサービスを全て受けられるわけではありません。
やはり本物のプライベートバンクのサービスを受けたいのであれば、最低でも1億円以上の資金が必要になっていきます。
プライベートバンクを見極める方法と最新動向
シンガポールやスイス、モナコ、中東など様々な国で「プレミア」「プライベート」という名前の付いた銀行口座を提供する銀行が増えてきています。
本物のプライベートバンクであるかどうか調査する際には、顧客サービスに注目することが重要です。行員はどの程度英語が話せるか?接客態度はどうか?当たり前のことかもしれませんが大金を預けるのであれば、その銀行があなたを単なる数字として扱うのではなく、お客様のことを真に考えたサービスを提供してくれるかがポイントです。
アジアの銀行では、中国の超富裕層が香港などの銀行に殺到しているため、最低限度額を高く設定する傾向が強まっているそうです。香港の保守的なローカル銀行のプライベートバンキングは、ほとんどが香港人と香港ID保持者向けで、海外向けには開かれていません。中東にもいくつかプライベートバンクが存在しますが、開設ハードルが高く、多くの西洋人が諦めています。
あなたはプライベートバンクの口座を持つべきか?
プライベートバンクを選ぶにしても、自国の銀行口座にこだわるにしても、プライベートバンクの口座は、あなたのために資金を管理・運用をしてくれるという期待を含んでいます。特にスイスの銀行は、口座の出入りを最小限にすることを望んでいます。給与の受け取り、ビジネスの引き落とし、第三者への支払いなどが必要な場合は、プライベートバンクの口座は必要ないでしょう。
しかし、事業の売却益や家族の財産など、眠っているお金がある場合、プライベートバンクを利用することで、より良いサービスを受けることができ、皆さんの手元に専属のバンカーを置くことができます。プライベートバンクの資格を得るのがギリギリの場合は、従来のリテール口座、あるいは、海外銀行口座の開設をするのも良いかもしれません。